ニュージーランドで高いと思ったものの一つが、卵。
日本だと1パック100円〜200円で買えますが、ニュージーランドのスーパーでは$7~8(540円〜630円)
「こんなに高いの?」と思ったら、隣には安価ものもあり、価格の違いに戸惑います。
実は、ニュージーランドの卵には価格が割高な"Free range(フリーレンジ )"というものが主流。
それが、価格を吊り上げているというわけです。
今回は、日本ではあまり馴染みのない"Free range(フリーレンジ)"について、ご紹介したいと思います。
Free range(フリーレンジ)は、ニュージーランドのみならず欧米圏では定番の商品。
なぜ日本では知られていないのかも、エシカルな視点から紐解きます。
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-- 記事内でのレートは1NZD=78円(2021年5月現在)での換算です。
目次
ニュージーランドのスーパーの卵コーナー
ニュージーランドの大手スーパーの卵コーナー。
12個入りだと、$7~8(540円〜630円)ものが多く並んでいます。
日本と比べると価格が高い印象です。
価格帯の高いパッケージには、全て"Free range(フリーレンジ )"と明記されています。
ニュージーランドでは、このフリーレンジを選ぶ人が圧倒的に多いそう。
では一体、"Free range(フリーレンジ)"とは何なのでしょう。
Free range(フリーレンジ )をご存知ですか?
卵の生産方法には以下の種類があり、Free range(フリーレンジ )とは、ケージに入れずに「屋外で放し飼いされた鳥から生まれた卵」のことを指します。
卵の種類
・カゴで飼われている鳥が産んだ卵
→"Cage Egg(ケージエッグ)"
・鶏舎内の平たい地面の上で飼う平飼い
→"Cage Free(ケージフリー)"
・完全に制限なく、屋外に放たれている状態
→"Free range(フリーレンジ)"
日本では珍しい"Free range(フリーレンジ)"ですが、ニュージーランドではごく一般的。
卵の種類自体をを指す言葉として、「フリーレンジ 買ってきて」というだけで伝わるほど。
では、日本ではなぜ知られていないのでしょう?
日本の卵の95%以上がケージエッグ
そもそも、日本の卵の95%以上は鶏舎内のカゴで買われている"cage egg(ケージエッグ)"。
ニュージーランドのように卵売り場で選択ができる以前に、フリーレンジ自体が生産されていないのです。
ちなみに
日本でも、いわゆる「有機卵」と呼ばれる高級卵が販売されていますが、こちらもほとんどがケージエッグ。
栄養価の高さと飼育方法は、別問題のようです。
それより「安全さ」や「動物に対しての責任」が大きいわね。
一般的にフリーレンジ は、鳥の餌に緑や昆虫が豊富に含まれているため、卵黄の色がよりオレンジになっていることがあるそう。
フリーレンジは手間と暇がかかる
ではなぜ、日本ではフリーレンジが主流ではないのでしょう。
理由は、やはりコスト面での比較です。
ケージエッグは、少ない敷地と一括管理しやすい金網の中で、大量生産することができます。
その反面、フリーレンジ は、屋外で放し飼いということもあり。広い敷地や管理も必要。
手間も暇もお金もかかります。
コスト面で比較すると
飼育手法 | 平均 | 最安 |
ケージ飼い (Cage Egg) | 36円 | 19円 |
平飼い (Cage Free) | 60円 | 31円 |
放し飼い (Free range) | 83円 | 59円 |
有機 | 126円 | 120円 |
※東京都区部 平成26年度畜産関係学術研究委託調査報告書より
コスト面での問題、それが日本の鶏卵業者のほとんどがケージエッグで生産を行なっている理由です。
ネットで調べたところ、日本でもフリーレンジを生産している鶏卵場もあるようですが、あまり市場に流通してないようです。
ニュージーランドでも、価格の安いケージエッグが流通していますが、3倍4倍も高くてもフリーレンジを選ぶ人々が多いです。
その理由は、日本の有機卵のような「栄養価の違い」ではありません(厳密にいうと、そうでもあるとも言えるのですが)
では、なぜフリーレンジ が支持されているのか。
それには大きく、2つの理由があります。
受けたストレスや抗生物質を懸念
ケージという限られたスペースでの生活は、ニワトリにとってもストレスがかかります。
そのため病気になりやすく、抗生物質の投薬などが行われます。
そのような環境で産んだ卵は、結局私たちが口にします。
投与された抗生物質や受けたストレスは、食べる人間にも影響するのではないかという考え方により、のびのびストレスなく生活をしている、ノンストレスなフリーレンジを手に取る消費者が多いというわけです。
"Animal Welfare(アニマルウェルフェア)"という概念
皆さんは"Animal welfare(アニマル ウェルフェア)"という概念をご存知でしょうか。
1960年代のイギリスで提唱された「工業的な畜産のあり方」の批判から生まれた概念で、イギリス政府が立ち上げた委員会では、「すべての家畜に、立つ、寝る、向きを変える、身繕いする、手足を伸ばす自由を」という基準を提唱しています。
アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは、感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされ た、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方です。欧州発の考え方で、日本では「動物福祉」や「家畜福祉」と訳されてきました。
--引用: 一般社団法人 アニマルウェルフェア畜産協会HP
家畜の劣悪な飼育環境を改善させ、ウェルフェア(満たされて生きる状態)を確立するために、次の「5つの自由」が定められました。
5つの自由
1.空腹と渇きからの自由
2.不快からの自由
3.痛みや傷、病気からの自由
4.正常な行動を発現する自由
5.恐怖や苦悩からの自由
今では、「5つの自由」は家畜のみならず、人間の飼育下にあるペットや実験動物など、あらゆる動物のウェルフェアの基本として世界中で認められています。
このAnimal welfareの概念から、エシカルへの意識の高いニュージーランド人はフリーレンジを手に取る消費者が多いのです。
日本は動物愛護に対する意識が低い
ちなみにフリーレンジはニュージーランドのみならず、アメリカやカナダ、ヨーロッパのスーパーでは当たり前のように販売されており、Animal welfare(アニマル ウェルフェア)に対する消費者の理解も深いです。
そもそも日本では、Animal welfareに対する意識の低さが世界的に問題となっています。
例えば、日本のペットショップ。
ニュージーランドのみならず、欧米ではペットは他人から、または保護されたもの譲り受けるのがほとんど。
透明な狭いケージに入れられている日本のペットショップの様子は、まるで人身売買のように映るよう。(逆にそれが珍しく思う観光客も少なくないようですが...
このように、Animal welfareの考え方に遅れをとっていることも、日本でフリーレンジが流通しないことの理由の一つです。
海外では生卵はゲテモノ扱い
ちなみに、ニュージーランドの卵の賞味期限は1ヶ月と長いものが多いです。
これは、卵を生食用として考えていないことによるもの。
そもそも、ニュージーランドのみならず、海外では生卵の飲食はNG
卵かけご飯を食べようものなら、高確率で驚かれます。
最後に|合わせて読みたい
今回はニュージーランドのスーパーで見かける卵、フリーレンジ についてのご紹介でした。
世界でもトップクラスのエシカル消費国であるニュージーランド。
スーパーで当たり前のように販売されていること、そして値段が高くても手に取る人が多いことから、実際にその意識の高さを伺えました。
日本に住む私たちにとって、フリーレンジを手に入れることは手軽ではありませんが、まずは「存在を知ること」が未来への第一歩。
グローバルスタンダードである"Animal Welfare(アニマルウェルフェア)"の概念も、今一度深く考えたいところです。
【引用/参照】
・Free range eggs(Wikipedia英語版)